北岳新雪と絶景

寒冷前線通過による雷・雪・強風。 360度の視界と神々の山

4年前に登ったときは、台風の来る前日だったため、冷雨に打たれ、登っただけでした。それも日帰りで、疲れ果てて帰宅という良い印象が残っていませんでした。
今回はそのリベンジです。
2002年10月15日。清水を3:00am出発。夜叉神峠経由広河原に。夜叉神峠で鹿に出会う。吉兆。
5:30amごろ広河原に到着。早い朝食をし、着替え6:40amごろ登りはじめました。今回の計画は肩の小屋に一泊。翌日北岳から間ノ岳、北岳山荘泊り、翌日下山でした。
同行者は宮本陽一郎君。お互いに毎日仕事で、トレーニングもしておらず、余裕のある計画をたてました。
かなり時間の余裕があるので、宮本君は得意のスケッチを目的に、私は写真撮り。歩く速さもゆっくりで、後から次々に追い越され、途中、お茶を飲んだり食事したり。
10:00amに二俣。一時間ほど休み、草すべりへ。紅葉もこの辺りはもう終わりでしょうか。天気は良く暑かった。
しかし稜線に出たとたん雲が山一面を覆い、強風が吹き付ける。急激な寒さが襲い、宮本君は腿を寒さでやられ歩く速度が落ちてきた。
稜線に出てから、肩の小屋までの距離がひどく長く感じた。4:00pmごろやっと到着。
この日、宿泊した人は写真狂いの高校の先生、これも写真好きな一見クールな30歳のお兄ちゃん、今日一日で八本歯から間ノ岳に登り返って北岳に登ってきた小柄な筋肉質の
若者、いかにも山のプロと思える山男二人、何がおきても大丈夫そうなおばさん二人ずれなど12人くらい。
この夜、日本列島は前線が吹き荒れた。遠く北アルプスに見えた雷雲が徐々に近づき消灯した9時過ぎに雷とあられ、強風が肩の小屋を激しく揺さぶる。
あまり眠れない夜が明けても外は強風と雪。仕方なく小屋で風のおさまる時間をすごす。7:00amごろ日が差し雪雲が取れてきた。時間がたつうちに雲はとれ周辺の景色が
浮かんで出て来た。鳳凰3山、甲斐駒、仙丈ヶ岳、富士山が。北岳の山頂の雲も取れてきたので写真。しかし強風はやまない。零下−4.0度。
雪が積もり、アイスバーン、強風で寒い。北岳山頂は雪煙が舞っている。この季節にまさに冬山と同じ条件になってしまった。
朝の貴重な時間が過ぎるに従い、山のプロ達が次々と下山を決心し小屋から去っていく。
私は、そのまま下山するか、山頂に向かうか大いに迷うところです。9:30amに宮本君が山頂に行くことに決断し私も従う。彼が行くと判断するなら大丈夫。
相変わらず風は強いがアイゼンを付け、寒さ対策をして一歩一歩上り始める。−1.0度。
先頭は宮本君。アイゼンは簡便な4本歯なので足元を固め、ルートの確保。一瞬の油断、バランスを崩すことがそのまま死に直結する緊張の連続です。
前日に北岳から滑落事故死が報道されており、余計に慎重に。夏山とは比較にならない登山技術が必要でしょう。
ヤッケの裾が強風ではだける中、ストックで踏ん張りバランスをとりながら、雪とアイスバーンをアイゼンで踏み固めやっとの思いで山頂に。
後で分かったが、先頭を歩く宮本君の靴のつま先はルート作りのため、アイスバーンと岩で傷だらけになっていました。
やっとたどり着いた山頂は、不思議なことに無風。暑い。景色は考えられないほどの絶景。
雲ひとつ無い、360度すべて見渡せる。北アルプス、中央アルプス、南アルプス、八ヶ岳、富士山。山頂に1時間半位いたでしょうか。
お茶を沸かし、チョコレートを食べ、この与えられた貴重な時を大いに満喫しました。
下りは登り以上に慎重に、滑落に気を配る。こちら側は雪があまり着いていないが、アイスバーンが続く。しばらくはアイゼンが外せない。
1:30pmごろ北岳山荘に着く。よく無事に登って、降りてきたと思います。宮本君に感謝!
この日、肩の小屋から登った人は我々を含め5人ほど。北岳山荘側からは6人くらい。しかし天気がおさまってあの素晴らしい光景を目に出来たのは
我々を含めわずか5人程度。贅沢な時を天からご褒美としていただきました。
この日は予定の間ノ岳に行く時間は無くなり、北岳山荘でゆっくりし、写真撮り。風もいつの間にか感じられないほどにおさまっていました。
翌17日は日の出を撮影すべく、夜明け前から活動。初めて見た北岳のご来光。時間ごとに変化する光の芸術、山並みの荘厳さ。実に感動の連続でした。
4年前とは比べ物にならない至福の時をいただいた幸せに感謝。
7時過ぎに北岳山荘からトラバースして八本歯へ。凍った斜面に気をつけながら下山。広河原に着いたのが2:30pmごろ。
宮本君もすばらしいいスケッチができた。力強い稜線は彼の思い入れの表れでしょうか。彼のHPでの紹介が待たれます。
自分にとって生涯最高の登山になることでしょう。
記録:ザックの荷物は着替え、非常食、2食の昼食、水2L、アイゼン、防寒服、手袋、ヘッドランプ、カメラ(スマートメディア128MB)等などで約12キロ。
    肩の小屋 一泊2食 ¥7000 水1L ¥200
           トイレ 屋外 環境に注意されたい
    北岳山荘 一泊2食 ¥7700 水1L 無料
           トイレ 水洗バイオ 屋内
  

肩の小屋から強風の北岳山頂を仰ぎ見る 強風が吹き抜ける北岳山頂と肩の小屋
快晴の北岳山頂から甲斐駒をみる 間ノ岳、農鳥岳方面の新雪
北岳山荘側から北岳を 北岳山荘からのご来光
まるで墨絵 スケッチする宮本君
北岳山荘から八本歯へのトラバースする梯子 二俣付近の紅葉
鳳凰三山                                富士山
遠く穂高連峰           仙丈ケ岳                         北岳
北岳                                  富士山                            間ノ岳


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